ブログ

2025-10-20 09:33:00

ティップとフロッグ

IMG_1261.jpegIMG_1819.jpegIMG_1248.jpeg

 

ティップは弓の先端、フロッグは弓の元にある毛箱の部分を指します。(写真ご参照ください)

 

子どもにとって、バイオリンの最初の難関は「弓の持ち方」です。

バイオリニストはまるで簡単そうに、馬のしっぽの毛が張られた木の棒を持っているように見えますが、

初心者にとって“正しい弓の持ち方”は、かなり摩訶不思議な手の形に感じるようです。

 

まずは右手の親指・中指・薬指で「キツネを作りましょう」。

その形のまま、弓のフロッグあたりを持たせます。

人差し指の第1関節を軽く曲げてサムグリップ(クッション部分)に添え、

小指は馬毛を調整するスクリュー(ネジ)の近くに優しく指先を乗せます。

 

…と、文字で説明しても「???」となりますよね。

小さなお子さんには、私がお手本を見せながら指を一本ずつ正しい位置に置いても、まず持てません。

持てたとしても3秒、というところです。

 

そこで、私の教室では“弓の持ち方養成ギブス”として輪ゴムを使います。

…ただの輪ゴムです。

フロッグの部分に右手薬指を固定するために輪ゴムを通し、それから他の指を整えていきます。(写真ご参照ください)

 

いつもクスリを塗る時くらいしか活躍のない薬指が、こんなに重要だったの?と思うほど、

弓を持つときに薬指が安定すると音が変わります。

また、小指もただ添えているだけのように見えますが、実はこの弓のバランスを取っているのは小指です。

 

まとめると――

・親指が弓を支え

・人差し指が弓に圧をかけ

・中指と薬指がしっかりと弓を抱え

・小指が比重のバランスを取る

…あぁ、書いているだけで弓を投げ出したくなります。(もちろん、死んでも投げませんが。)

 

そしてやっと弓が持てるようになったと思ったら、次はボーイングです。

FROGからTIPへ(ダウン)、TIPからFROGへ(アップ)。

ゆっくりと“全弓”を使うことさえ、最初はとても大変。きちんと全弓が使えるようになるまで、何ヶ月もかかることもあります。

 

バイオリンというと、左手の神業のような超絶技巧の動きに「おぉ〜👏🏻」となりがちですが、実はボーイング(弓使い)もそれと同じくらい、いえ、それ以上に難しいコントロールを求められるのです。

 

私自身、先生が変わったときに「弓の持ち方とボーイングを1からやり直し」と言われ、1ヶ月間、開放弦のA線しか弾かせてもらえませんでした。

毎日毎日、FROGからTIP、TIPからFROGへ、ただそれだけを何時間も。

受験前だったので「試験曲、やらなくていいのかなぁ」と内心ヒヤヒヤしながらも、

先生のOKをいただけるまでA線を弾き続けました。

けれど、少しずつ正しいボーイングが身についてくると、練習曲をひとつ弾くだけで、音が無理なく素直に出て、

p(ピアノ)やf(フォルテ)もつけやすくなり、なにより音がきれいになったのを自分でも感じました。

 

あの小学6年生4月の1ヶ月間は、私にとって本当に大切な時間だったのだなと、

いまも生徒さんに弓の持ち方を教えるたびに思い出します。

2025-09-30 08:45:00

イヌと音楽

IMG_1566.jpeg

 

IMG_1565.jpeg

IMG_1564.jpeg

昨年の春にお別れした愛犬RODE(ローデ)

ポーチュギーズウォータードッグという少し珍しい犬種です🐕‍🦺

性格は大人しく、穏やかで、優しい子でした。

人に吠えたことは一度もありません。

 

RODEという名前は大好きな作曲家からいただきました。

Violinの練習曲集は有名な「カイザー」から始まり、次に「クロイツェル」に進みます。

そこから先の練習曲集には色々な選択肢があるのですが、私の恩師は

「RODE、24のカプリスを買ってくるように」

と高校生の私に指示。

(私はなぜか練習曲が大好きで、試験の課題曲そっちのけでそちらばかり弾く困った生徒でした)

試験前のホームレッスンでいつも通りセブシックやクロイツェルを譜面台にいそいそと出すと

「試験の前にんなもん弾いてる場合かー⚡️」

と落雷を受け、すごすごとレッスンバッグに楽譜を引っ込めていました…

さておき、

我が愛犬RODEは音楽が好きだったか?

というと、結果は好きでも嫌いでもなく。

私がViolin、Piano、celloをびらびら何時間でも弾いていようが

友人が来てアンサンブルをじゃんじゃん弾いていようが

生徒さんのレッスンをしていようが

(※イヌ好きな生徒さんに限り、RODEが手術後など目が離せない時はレッスンに同席させていただいておりました)

誰がなにを弾いていても我関せず、心ここに在らず

グランドピアノの下はタイルなのでひんやりと冷たく気持ちいいのでしょうね、夏はそこでいびきをかいて寝ていました。

私がレッスン室に不在時(生徒さんに練習室としてお貸ししている時など)も見向きもしません。

ところが

年に一度だけ、釘付けになる日があるのです。

それは『調律師さんが来る日』

レッスン室のガラスドアの前に仁王立ちになり、時に座り、じーっと中の音を聞いているのです。

「おもしろいの?笑」

と伺っても調律師さんの弾くPianoに全集中、無視される私。。

 

わたしは子供の頃、年に2回来る調律師さんのお仕事が不思議で仕方なく、決してお邪魔しないという約束で、傍らで調律を聞かせていただいてました。

少しづつ変わってゆく音、

調律師さんならではの軽やかな音階、

3度、5度と移ろう和音が面白く、じーーっとおとなしく聞いていました。

 

私あなた産んでないけど、遺伝した?

 

1